W杯進出を決めた本田選手に見る日本人のグローバルリーダー観

W杯進出を決めた本田選手に見る日本人のグローバルリーダー観

  • 2013-06-05 (水)
  • グローバルリーダー
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ワールドカップ出場を決めた日本代表選手の記者会見の場での本田選手の発言が印象的でした。彼の発言から見えてくるのは、「個」と「チーム」の2軸です。「個」とはつまり、①シュートを決めること、ドリブルでの突破、タックルをされても倒れないフィジカルの強さなど個人のスキル、②自分が決めるという強い精神力、③チームを鼓舞する強いリーダーシップということが出来ます。 それに対し、「チーム」というのは、①速いパスワーク、ディフェンスラインのコントロール、ゴール前のアシストなどチーム全体のスキル、②時には自分が犠牲になってもチームのために献身的に戦うという奉仕の精神、③監督・コーチ・キャプテン・先輩に忠実なフォロワーシップということができます。 「和をもって尊しとなす」という伝統がある日本の場合「チーム」が尊重され、時には「出る杭は打たれる」というように強いリーダーが必ずしも良しとはされない文化があります。では、どちらが大切なのでしょうか。本田選手が記者会見で言いたかったのは、日本の良さは認めつつも、強い「個」が足りなければ世界を相手に勝つことは出来ないということだと思います。 私は現在グローバルリーダーの育成に関する研究を進めていますが、グローバルで勝つために何が必要かという議論の1つが「個」と「チーム」の二項の対立です。私はどちらも大切だと考えていますが、世界に目を向けると強いリーダー育成のための「個」の教育に力を入れている国が多いのも事実です。 私が行ったインタビュー調査ではアメリカでは小学校の低学年からリーダーシップを尊重した教育がなされています。私の娘が小学校1年の時の運動会でクラス対抗のリレー選手を選ぶのに、一番早い生徒を選抜せずくじ引きで選んでいたことには驚きました。日本のサッカーが世界のトップチームと対等に戦うために直面している問題は日本の企業がいかにグローバル環境で戦うかという昨今の問題と極めて類似していると思います。 企業の教育現場にいる私が感じるのは、新入社員・中堅社員・幹部社員ともに強い個性を持ったリーダーを見かけることが少なくなったことです。ただ、そう嘆くのではなく、いかに強い「個」を持ったリーダーを育成すれば良いのかをさらに研究を進めていきたく思います。ただし、日本の本来の良さである「チーム」つまり「和」は絶対に見失ってはなりません。 ある大企業で海外拠点の責任者を任され、2人の娘さんが外国人と結婚されたというエグゼクティブの方が仰ってた言葉が印象的です。 「私は娘が外国人と結婚することに全く抵抗を感じていない。これからは国際結婚の時代なので自分で決めたのであれば尊重したい。ただし、彼女達に言ってるのは私達はアジアに生まれたのであり、日本人の血が流れているのだ。それだけは忘れるなと言っています。」私達にとっても大切なメッセージです。